阿佐ヶ谷「横濱ラーメンあさが家」で味わう本流家系ラーメン！赤い看板が導く、職人技の一杯

阿佐ヶ谷「横濱ラーメンあさが家」で味わう本流家系ラーメン

阿佐ヶ谷「横濱ラーメンあさが家」で味わう本流家系ラーメン

中央線・阿佐ヶ谷駅の北口を出て数分。商店街の喧騒の中で、赤い看板に白い文字で「横濱ラーメンあさが家」と掲げられた店が目に留まった。チェーン展開ではなく、30年にわたり横浜の老舗「寿々㐂家」で修行を積んだ店主が独立して開いた個人経営のラーメン店だと聞き、どうしてもその一杯を味わってみたくなった。

家系ラーメンというと、どこか“男臭い”イメージを持つ人もいるかもしれない。だが「あさが家」は違う。赤を基調にした外観は潔く、店内に入った瞬間に立ち上る豚骨と鶏油の芳醇な香りが鼻をくすぐる。カウンターだけの小さな店内は、湯気に包まれた厨房と客席が一体化しており、職人の手仕事を間近で感じられる。まさに“個人店ならではの距離感”だ。

タッチパネル券売機から始まる“儀式”のような注文体験

店に入ってすぐ左手にあるタッチパネル式券売機で、迷わず「特製ラーメン」を選択。隣では常連らしき男性が「硬め・濃いめ・多め！」と元気にオーダーしている。厨房では4名ほどのスタッフが息の合った動きで湯切りや盛り付けをこなしており、無駄がなく美しい流れ。個人経営の店ながら、チームワークの完成度は老舗の風格を感じさせる。

バランス型スープと酒井製麺の競演【特製ラーメン】

横浜で磨かれた一杯

目の前に届いた「特製ラーメン」。丼を覆うように8枚もの海苔が並び、中央には刻みネギの山、その下からは黄金色の鶏油が輝くスープが顔を覗かせる。レンゲを差し入れると、まず香りが広がった。豚骨のコクは濃厚でありながら、臭みはまったくない。毎朝仕込むという豚ガラスープと、澄んだ鶏油、そして醤油ベースのカエシ。この三位一体のバランスが絶妙で、スッキリしているのに、しっかり濃い。まさに“飲み干せる家系スープ”だ。

麺は家系ラーメンの正統を継ぐ「酒井製麺」

麺は家系ラーメンの正統を継ぐ「酒井製麺」。茹で加減は中太のもちもち感を最大限に引き出す絶妙なバランスで、噛むたびに小麦の香りが立ち上る。スープの絡みもよく、刻みネギのシャキシャキとした食感がリズムをつくる。

“飲み干せる家系スープ”

ほうれん草の代わりに盛られた青菜も印象的だ。やわらかく茹でられていながら青菜特有の苦みがしっかりと残り、脂の多い“飲み干せる家系スープ”に心地よい清涼感を与えている。このあたりの工夫に、店主のセンスと経験が光る。

チャーシューの厚みと抜群の存在感

肉の旨味でスープが完成する

阿佐ヶ谷「あさが家」チャーシューの厚みと存在感 — 阿佐ヶ谷「あさが家」チャーシューの厚みと抜群の存在感

特製ラーメンの主役のひとつが、厚切りのチャーシューだ。赤身中心の肉質で、ホロホロと崩れるような柔らかさではなく、噛むほどに肉の旨味を感じるタイプ。口に入れた瞬間、脂の甘みと醤油ダレの香ばしさが広がり、スープの塩気と見事に調和する。家系のチャーシューというと“脂トロ系”を思い浮かべる人も多いが、あさが家のチャーシューは“筋肉質な旨さ”を楽しむ肉好き向けだ。

調味料を“混ぜずに置く”のがあさが家流

七色の味変が楽しめる

テーブルにはニンニク、唐辛子、ラー油など、味変のための薬味がずらりと並ぶ。中でも印象的だったのは唐辛子。辛味だけをピンポイントで加えられる優秀な調味料で、スープ本来の旨味を壊さない。

辛味だけをピンポイントで加えられる唐辛子

ラー油は香りが強く、数滴垂らすだけでスープが深みを増す。店主いわく、「全部混ぜずに、丼の上で落とす場所を変えて楽しむのがオススメ」とのこと。その言葉通り、一口ごとに表情を変える味わいに夢中になった。

最強のラーメンに最高の海苔

強い海苔へのこだわりが生む最強ライス

「あさが家」で特に印象に残ったものの一つ、兵庫県産の上質な海苔。厚みがありながら口の中でふわっとほどけ、スープをたっぷり吸わせると一気に旨味が広がる。濃厚な豚骨スープの余韻をまとわせて、白いご飯を巻いて頬張る――その瞬間、海苔の香ばしさとスープのコクが絶妙に溶け合い、思わず笑みがこぼれるほど。これぞ家系ラーメンの醍醐味だ。