以前からInstagramで見かけて気になっていた黒ごまバナナトースト。この日は明大前駅付近まで用事があり、せっかくなら一駅足を伸ばそうと京王線で下高井戸へ向かった。目当ては「HEIM」。黒ごま×バナナという組み合わせがどうしても頭から離れなかった。

訪れたのは2026年2月の日曜日、営業開始直後の9時15分。駅から徒歩1分、扉を開けるとコンクリート打ちっぱなしの無機質な空間が広がる。黒とグレーで統一された店内は静かで、洋楽が低く流れている。若者向けの雰囲気を感じつつ、この時間帯は中年の男性客が1名いるだけだった。朝特有のコーヒーやトーストの強い香りは、まだ店内には充満していない。
入ってすぐ右手のカウンターで注文と会計を済ませるスタイル。黒ごまバナナトーストとセットコーヒーで1,680円(税抜)。モーニングとしては決して安くない。正直に言えば少し構えた。ただ、その価格でどこまで満足できるのかを確かめたくなった。
プレートを受け取った瞬間、視界に黒と黄色が飛び込んできた
注文から10〜15分ほどで振動タイプの呼び出しリモコンが鳴る。カウンターへ向かい、自分でプレートを受け取る。その瞬間、入店時には感じなかった焼けたパンの香りが立ち上がった。

厚切りのトーストの上には、黒ごまペーストがしっかりと塗られ、その上にバナナのスライスが隙間なく並ぶ。黒と黄色のコントラストが強い。さらに中央にはバターがのり、じわりと溶け始めている。視覚的なインパクトは十分だ。横にはグリーンサラダ、キャロットラペ、そしてローストチキン。思っていたより皿の余白はあるが、色の配置が整っていて写真を撮りたくなる。
無機質なテーブルにプレートを直置きすると、料理の色味が際立った。空間との相性が良い。
鼻を近づけたとき、黒ごまより先にバナナが立ち上がった
まずは香りを確かめたくなり、顔を近づける。黒ごまの香ばしさを想像していたが、最初に届いたのはバナナ特有の甘い匂いだった。私は正直、この香りがそれほど得意ではない。

ただ、パンの表面はしっかりと焼かれていて、湯気は控えめながら温度はきちんと保たれている。黒ごまの香りは鼻を少し横にずらすとふわっと広がる。バナナの甘い香りと、焙煎されたごまの香ばしさが同時に存在している。
フォークで軽く押すと、厚みのあるパンが弾力を返してくる。上にのった具材の重みを支えているのがわかる。食べ応えがありそうだと、この時点で身体が予感する。
口に入れた瞬間、黒ごまのコクが甘さを押し上げた
ひと口目。まず感じたのは黒ごまの風味だった。想像よりも濃い。ペーストは滑らかだが、その中にわずかに粒の大きいグラニュー糖のようなものが混ざっていて、噛むとカリッと弾ける。その瞬間に甘みが広がる。

バナナはとろりと柔らかく、黒ごまのコクに包まれる形で存在している。甘さが単独で主張するのではなく、香ばしさに引き上げられている印象だ。厚切りのパンは外側が軽く焼かれ、中はふわっとしている。具材の重みを受け止めつつ、噛むたびに弾力がある。
途中でバターが溶け出し、黒ごまペーストと混ざるとコクが一段深くなる。口の中で油脂と甘みが一体化し、体温でゆっくり広がっていく。ドリンクと合わせる前提で設計されていると感じた。
付け合わせのローストチキンは、噛むと肉の繊維がほどける。塩気は控えめだが、旨みがはっきりしている。サラダとキャロットラペのシャキシャキした食感が続き、口の中がリセットされる。
最初は物足りないと思ったが、咀嚼を重ねるうちに満腹へ変わった
見た目だけを見たとき、正直ボリュームは控えめかもしれないと感じた。しかし食べ進めると印象は変わる。厚切りパンの密度、黒ごまペーストの重さ、バナナの水分量。自然と咀嚼回数が増える。
そして、あれほど気になっていたバナナの香りは、数口後にはほとんど意識しなくなった。黒ごまの風味が主軸となり、甘さがバランスを取る。最初の違和感は消え、純粋に味わいに集中できた。
1,680円という価格は決して安くないが、食べ終える頃には満腹感がしっかりある。時間をかけて噛み、味わう設計だと理解したとき、金額への納得感が生まれた。
丁寧な接客と静かな音楽が、滞在時間を伸ばした
注文と会計は入店直後に済ませる前払い制。カードや電子マネー、QR決済にも対応している。対応は穏やかで丁寧だった。過度な会話はないが、距離感が心地よい。

店内は全席禁煙、Wi-Fiと電源も利用可能。席数は約30席。椅子はやや硬めで、長時間座るには少し体勢を変えたくなるが、この日は記事を書き終えるまで滞在できた。洋楽が一定の音量で流れ、客同士の距離も適度にある。
料理単体だけでなく、この空間があるからこそ朝の時間が整う。ローストチキンを食べながら、夜にここでワインを飲む光景が自然と浮かんだ。昼はカフェ、夜はバーという二面性を、皿の上から感じた。
黒ごまの余韻が残る朝、また来る理由がはっきりした
滞在時間はおよそ1時間半。人混みを避けて、静かに過ごせる場所を探している人には向いている。チェーン店ではなく、少し個性のあるモーニングを食べたい人にも合う。写真映えを狙う人にも良いだろう。
一方で、価格重視の人や、ふかふかのソファで長居したい人には向かないかもしれない。椅子は硬めだし、朝食としては高めの設定だ。

私は黒ごまの濃さと、ローストチキンの完成度に再訪理由を見つけた。次は夜に訪れ、このチキンをアテに酒を飲みたい。そして気になっているカスタードプリンも試すつもりだ。
下高井戸で、少しだけ特別な朝を過ごしたいとき。HEIMの黒ごまバナナトーストは、その選択肢として確かに残った。
【どんな人に向いているか】
・人混みを避けて静かに朝時間を過ごしたい人
・チェーン以外でモーニングを楽しみたい人
・黒ごまやバナナの組み合わせに好奇心がある人
・写真映えするトーストを探している人
【向いていない人】
・ワンコインに近い価格帯を求める人
・柔らかい椅子で長時間くつろぎたい人
・バナナの香りが苦手で強く感じてしまう人
下高井戸で出会える絶品“たい焼き”をまとめました。
HEIM(【旧店名】ハイム コーヒーアンドビストロ)
【住所】〒156-0043 東京都世田谷区松原3丁目30−11
場所:京王線「下高井戸駅」から徒歩1分。 昔からの店が軒を連ねる商店街の中に店を構える。 Googleマップで場所を見る
このブログでは、チェーン店では味わえない、その街ならではの魅力が詰まったグルメ情報を中心に発信しています。首都圏を中心に、個人経営の飲食店や地域に根付いた名店など、Web上では見つけにくい飲食店を実際に訪問し、実食をもとに率直な感想をまとめています。
紹介している店舗はすべて筆者自身が足を運び、料理の味わいだけでなく、店の雰囲気や立地、訪問時の印象まで含めて記録しています。実体験に基づいた情報を大切にしているため、初めて訪れる方でも参考にしやすい内容を心がけています。
いつもの外食から一歩踏み出し、新しい味や店との出会いを楽しみたい方に向けて、非チェーンの飲食店を中心に紹介しています。本ブログが、日々の食事選びや外出のきっかけづくりに少しでも役立てば幸いです。
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