仕事でたまたま人形町を訪れた平日、少しだけ時間に余裕ができた。老舗が多いこの街で、昔から変わらない味に触れてみたいと思ったのが訪問のきっかけだ。インスタグラムで見かけて気になっていたこと、子供の頃にお子様ランチを食べて以来、洋食というジャンルにどこか特別な感情を持っていること、そしてたまには自分にプチ贅沢を許したかった。そうした理由が重なり、自然と足は芳味亭に向いていた。
開店と同時の11時半。人形町駅から徒歩1分という立地にある芳味亭は、想像していた「老舗の重み」とは少し違う印象だった。店内は清潔感があり、過度な年季や風化は感じない。エレベーターが設置され、白衣にコック帽を被ったシェフたちが淡々と料理を作っている姿が見える。丁寧な接客で案内されたのは3階。予約なしにもかかわらず通された個室には、フカフカのソファー席が置かれ、まるで重要な会議でも始まるかのような静けさがあった。

老舗の洋食店、看板メニューのビーフスチュー。正直に言えば、期待はかなり高かった。その分、どこかで「本当に今の自分に刺さる味だろうか」という小さな違和感もあった。クラシックな洋食は、時に記憶補正で美化されがちだ。その答えを確かめるために、今日はここに来た。
人形町・芳味亭の個室で静かに待つ時間

個室で料理を待つ時間は不思議と落ち着く。周囲の話し声はほとんど聞こえず、清潔な空間に漂うのはかすかな厨房の気配だけ。客層はサラリーマンから年配の方まで幅広いが、全体的に年齢層は高めに感じた。匂いがほとんどないのも印象的で、油やソースの主張が前に出てこない。これから出てくる料理に集中できる環境が、自然と整えられている。
土鍋で現れた芳味亭の伝統ビーフスチュー
運ばれてきた瞬間、思わず姿勢が正された。黒く年季の入った土鍋に、ビーフスチューが並々と注がれている。この店の看板が、迷いなく主役として現れた瞬間だった。

大きな牛肉の塊がゴロゴロと顔を出し、表面には照りがある。ぐつぐつと煮立ってはいないが、土鍋越しに伝わる熱で、しっかりと熱々だと分かる。立ち上る香りは濃厚で、煮込み料理ならではの芳醇さが鼻をくすぐり、自然と食欲を刺激してきた。
最初の一口で感じたビーフスチューの奥行き
スプーンを入れ、まずはソースを一口。デミグラスソースは濃厚でコクがあり、しっかりと煮込まれていることが伝わってくる。派手さはないが、味に深みがある。正直、最初の印象は「平凡かもしれない」と一瞬よぎった。しかし、それはすぐに覆されることになる。

牛肉は箸を入れるだけでほろりと崩れるほど柔らかい。口に運ぶと、繊維がほどけるように溶けていく。濃厚なソースが肉に絡み、噛むたびに旨味が広がる。この食感は、しっかりと時間をかけて煮込まれた証拠だと感じた。煮込み料理の醍醐味が、ここに凝縮されている。
食べ進めるほどに印象が変わるビーフスチュー
ご飯かパンを選べるが、今回はパンを選択した。軽くオーブンで焼かれたパンは温かく、表面がほのかにカリッとして香ばしい。シチューのソースをたっぷりと絡めて口に入れると、言葉はいらない。お代わりができるのも嬉しいが、それ以上に「この組み合わせが完成形だ」と自然に納得してしまう。

不思議なことに、食べ進めるほどに味の印象が変わっていった。最初は穏やかに感じた味わいが、後半になるにつれて存在感を増してくる。老舗洋食店が長年守ってきた一品なのだと、じわじわと理解させられる感覚だ。これまで食べてきたビーフシチューの中でも、確実に記憶に残る位置に入った。
副菜と器に宿る時間の積み重ね
副菜はニンジンとレンコン。主張しすぎず、ビーフスチューの邪魔をしない存在だ。黒い土鍋は、長年使い込まれてきたであろう風格があり、この料理が積み重ねてきた時間を静かに物語っている。器もまた、料理の一部なのだと実感した。
期待と違った点も正直に
とても満足度の高いビーフスチューだったが、個人的にはもう一段階、濃厚さを期待していたのも事実だ。決して物足りないわけではない。ただ、自分の好みとしては、さらに重みのある味を想像していた。そのギャップも含めて、実際に食べて初めて分かる感覚だと思う。
芳味亭の接客が作る余韻
接客は終始丁寧だった。水が減れば自然と注ぎに来てくれ、食後には「ゆっくりお食事できましたか?」と声をかけられる。個室での食事だったこともあり、特別扱いを受けたような気持ちになる。

印象的だったのはトイレで、店内とはまた違う装飾が施され、空間演出へのこだわりを感じた。
食後に残った判断と再訪の理由
他の料理もぜひ食べてみたい。そう思わせるだけの説得力が、この一皿にはあった。ただ、正直なところ予算的には頻繁に通える店ではない。だからこそ、たまのご褒美や、大切な人との食事、お取引先との会食に使いたい店だと感じた。
人形町という街の老舗感を、落ち着いた空間で味わいたい人には、強く記憶に残る体験になると思う。
どんな人に向いているか
人形町で老舗洋食を静かに味わいたい人、ビーフスチューという料理にしっかり向き合いたい人、接客や空間も含めて食事を楽しみたい人。たまのご褒美として、少し背筋が伸びるランチを求めている人には向いている。
向いていない人
日常的に気軽な価格で洋食を楽しみたい人、濃厚さやインパクトだけを求める人、にぎやかな雰囲気で食事をしたい人には合わないかもしれない。
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【住所】〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2丁目3−4
【最寄り駅】東京メトロ日比谷線人形町駅から徒歩1分
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