吉祥寺で海鮮系の居酒屋を探していると、何度か目に入っていたのがかどや魚丸だった。インスタグラムで良酒場を多く紹介している投稿の中でも、画面をスワイプする指が止まった店。刺身の写真も良かったが、それ以上に店の空気感に引っかかるものがあった。ただ、なかなか来店機会に恵まれず、この日ようやく吉祥寺での用事終わりに立ち寄ることができた。
2026年4月24日、金曜日。時間は21時40分。吉祥寺駅東口側は二軒目利用らしい人の流れが増え始めていて、ヨドバシ裏の飲み屋街にはまだ熱気が残っていた。金曜夜の吉祥寺はどの店も強い。海鮮居酒屋を探して歩いている人も多く、吉祥寺飲み需要の厚さを感じる時間帯だった。

JR中央線吉祥寺駅から徒歩4分。店の引き戸を開けると、湿度を含んだ揚げ油の匂いと魚の香りが一気に流れてくる。カウンター越しには揚げ場の音。奥ではグラスが触れ合う乾いた音が混ざる。照明はやや落とし気味で、木の色が濃く見える。客層は30〜50代中心。一人飲みもグループもいるが、全体的に酒場慣れした空気。運よくカウンターに空きがあり入店できたものの、店内はほぼ満席だった。
刺身盛り合わせで掴まれる|吉祥寺「かどや魚丸」の破格すぎる海鮮体験

最初に提供されたのは刺身盛り合わせ一人前。運ばれてきた瞬間、まず量感がおかしい。器の上に厚切りの刺身が隙間なく並び、その中央に有頭エビが乗っている。
マグロは角が立つほど厚い。口へ入れると冷気を残したまま繊維がほどける。イカは包丁の入り方が細かく、噛み始めはねっとり、その後に甘みが広がる。ハマチは脂が舌に残るが重たくない。ホタテは水っぽさがなく、断面の繊維感がはっきりしていた。

イワシ、鯛まで入って1人前1000円。しかもどのネタも分厚い。吉祥寺の海鮮居酒屋を探している人なら、この一皿だけでも十分に再訪理由になると思う。
特に印象的だったのは、“安さ”ではなく“雑にしていないこと”。舟盛り系の刺身は見た目重視で一切れが薄い店も多いが、ここは逆だった。食べ応えが先に来る。酒を進ませるための刺身ではなく、刺身そのものを食べさせる構成。
この時点では、正直この盛り合わせがこの日の主役になると思っていた。
店内仕込みのポテトサラダで酒場の基準が決まる

二品目はポテトサラダ。白い小鉢に盛られたシンプルな見た目だが、スプーンを入れた時点で既製品とは違う感触がある。
じゃがいもの潰し方が均一ではない。滑らかな部分と、小さく塊を残した部分が混ざっている。冷えすぎておらず、口へ入れると芋の温度感がまだ残っていた。
マヨネーズは強すぎない。胡椒も控えめ。その代わり、じゃがいもの甘みと油分がゆっくり舌に残る。派手さは無いが、スピードメニューとしての完成度が高い。
こういうポテトサラダを出してくる店は、揚げ物が強い。食べながらそんな予感が頭に浮かんだ。
ただ、役割としては完全に箸休め。刺身の厚みで一度強くなった舌をリセットする存在だった。
魚丸名物アジフライが置かれた瞬間、空気が変わった
三品目。今回の主役になった「魚丸名物アジフライ(有頭骨煎餅付き)」が運ばれてくる。皿が置かれた瞬間、まず視線を奪われるのがサイズ感だった。一般的なアジフライの印象とは違う。丸ごと一尾を三枚おろしにした大ぶりの鯵。その存在感が皿からはみ出している。

揚げたての油の香りが湯気と一緒に立ち上がる。衣の表面は細かく泡立っていて、光が当たるたびに粒が立つ。
隣の客も一瞬こちらの皿を見た。店内で何枚も注文が入っている理由が、この見た目だけで伝わってくる。
添えられたタルタルソースは粘度高め。さらに皿の奥には、三枚おろしで残った頭付きの骨せんべいまで丸ごと盛り付けられていた。
ここでようやく、この店が単なる「吉祥寺の刺身居酒屋」ではないことに気づく。
丸ごと一尾を食べ切る構造が強い|アジフライ体験を分解する
サクサクの衣とふっくらした身の温度差が残る

箸を入れた瞬間、衣が軽く割れる。音が乾いている。油切れが良く、衣が舌に張り付かない。
一方で、中の身は完全に別物だった。繊維がふわっと崩れる。厚みがあるため、中心部にはまだ熱が閉じ込められている。
揚げたての温度が頬の内側に残る感覚。アジの旨みが遅れて広がる。
想像していたのは“定食屋の延長線上にあるアジフライ”だった。しかし実際は違った。衣を食べる料理ではなく、魚の厚みを楽しむためのアジフライだった。
タルタルと醤油、交互に使うことで輪郭が変わる
まずタルタル。粘度が高く、衣にしっかり乗る。酸味は控えめで、揚げ油の熱を受け止める方向。
途中から醤油を数滴だけ落とす。すると熱を持った衣から醤油の香りが立ち始める。これがかなり良い。

タルタルで油を包み、醤油で魚の香りを立たせる。交互に食べることで単調さが消える。
特に醤油を使った瞬間、“居酒屋のアジフライ”として輪郭が強くなった。白飯ではなく酒が欲しくなる味の設計。
骨せんべいが伏兵だった

そして驚いたのが有頭骨煎餅付きという構成。
三枚おろしで残った骨を、そのまま丸ごと素揚げにしている。これがただの飾りではない。
頭から齧ると、カリカリとした硬質な音が響く。細い骨は砕けるが嫌な刺さり方をしない。わずかに残った身から魚の旨みが滲み出る。
アジフライ本体が“ふっくら”なら、骨せんべい側は“圧縮された旨み”。温度が下がるにつれて香ばしさが強くなるのも面白い。
一番期待していたのは刺身盛り合わせだった。だが、記憶に残ったのは間違いなくこの骨せんべい込みのアジフライ体験だった。
ポテトサラダは脇役だったが、役割は明確だった

改めて振り返ると、ポテトサラダ単体で強烈な印象を残したわけではない。
ただ、この日の流れでは重要だった。刺身の冷たさ、アジフライの油、その中間地点として機能している。
弱点を挙げるなら、アジフライの存在感が強すぎること。同じタイミングに置かれると、どうしても印象は薄れる。
それでも、店内仕込みの質感や温度管理を見る限り、居酒屋メニュー全体の底上げを担っている一皿だった。
「かどや魚丸」の主役は本当にアジフライだったのか
結論から言えば、この日の主役は間違いなくアジフライだった。刺身盛り合わせのインパクトも強い。実際、吉祥寺で刺身が美味しい居酒屋を探している人なら十分満足できる内容だったと思う。
ただ、再訪理由になるかで考えると話が変わる。

丸ごと一尾を三枚おろしにし、さらに頭付き骨せんべいまで一体化させた構造。その“魚を最後まで食べ切る体験”が記憶に残る。
もし一皿削るなら、ポテトサラダかもしれない。だが、アジフライは削れない。刺身盛り合わせも残したい。
つまりこの店は、「刺身居酒屋」だけで終わらない。吉祥寺アジフライの文脈でも十分戦える店だった。
再訪するなら、次も間違いなくアジフライは頼むと思う。そして日本酒を合わせたくなる。

2026年4月24日金曜日、21時40分入店。22時55分退店。支払金額は約3500円、支払いは現金。カウンター席中心の空気感も含めて、“吉祥寺で魚を食べながら飲む夜”として記憶に残る時間だった。
営業時間・定休日・予約・混雑状況・席数・喫煙可否などは訪問時点情報から変動する可能性があるため、来店前確認推奨。
【向いている人】
・吉祥寺で海鮮居酒屋を探している人
・刺身だけでなく揚げ物の強い店に行きたい人
・アジフライを酒場利用で楽しみたい人
・一人飲みで満足度の高い魚料理を食べたい人
【向いていない人】
・静かな空間でゆっくり食事したい人
・油物を避けたい人
・広い席間隔を求める人
一言要約:
丸ごと一尾を食べ切る構造まで含めて完成していたアジフライ体験。
この店の決定的特徴:
刺身の豪快さだけではなく、“骨せんべい込みで一尾を成立させるアジフライ”に体験価値があること。
他店との違い(体験ベース):
単に大きいアジフライでは終わらない。揚げたての温度、醤油の立ち香、骨の香ばしさまで含めて、一皿の中で食感と香りが段階的に変化していく。
吉祥寺ディープ酒場
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かどや魚丸 吉祥寺店
【住所】〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目32−3 ロイヤル プラザ 1F
【最寄り駅】:JR中央線「吉祥寺駅」から徒歩4分。 飲み屋街の一角に店を構える。 Googleマップで場所を見る
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