2026年7月12日の日曜日、西荻窪へ向かった本来の目的は別のカレー店だった。西荻窪駅で降り、目的地へ歩き始めると、11時25分頃に店先から漂ってきた香りで思わず足が止まる。まだ開店前にもかかわらず、すでに6名が並んでいた。その香りを前にすると予定を変えない理由が見つからず、気づけば私も列の最後尾へ並んでいた。その店が「フレンチカレーSPOON」だった。

時間通りに開店すると店内へ案内された。店内はカウンター8席のみ。席数こそ多くないが窮屈さは感じず、洋食店のような落ち着いた空気が流れている。店内には強すぎないスパイスの香りが漂い、店主の丁寧な接客もあって初めてでも肩の力が抜けた。フレンチという言葉から少し緊張していたものの、実際には居心地の良いランチタイムだった。
私が最初に抱いていたイメージは、いわゆる欧風カレーだった。しかし実際に食べ終えて残った印象はまったく違う。小麦粉で作るルーを軸にした重たい欧風カレーではなく、素材を生かした軽やかさとフォン・ド・ヴォーの旨味を感じる一皿だった。この最初の違和感が、この日の体験を一番印象深いものにしてくれた。
西荻窪駅前で予定を変えたほどの香りだった

開店まであと数分という時間だったが、店の外まで届く香りにはっきりと反応してしまった。スパイスだけが前面に出る香りではなく、ビーフシチューを思わせるような洋食らしい深みが混ざっている。フォン・ド・ヴォーらしい重厚感がありながら重たく感じない。その香りだけで「ここは気になる」と判断し、当初向かっていた店をその場で変更した。
11時33分にタッチパネルで注文を済ませる。今回注文したのは「スペシャルフレンチカレー」と自家製ラッシー。11時40分にラッシーが届き、11時45分には最初の来店客へカレーが提供される。私のカレーが届いたのは11時50分だった。行列店でも提供の流れが見えるため、待っている時間に不安は感じなかった。
スペシャルフレンチカレーは最初の一目で特別感が伝わった

運ばれてきた瞬間に最初に目へ飛び込んできたのは、圧倒的な存在感を放つトロ肉だった。その周囲を彩り豊かな野菜が囲み、お皿の脇には温玉が添えられている。具材が平面的ではなく立体的に盛り付けられているため、一皿全体がフレンチらしいプレート料理に見えた。
雑穀ご飯の色合いも美しく、大きめの器によって料理全体に高級感がある。写真を撮るためにカメラを構えたくなる見た目だったが、見栄えだけでは終わらないことは、このあとすぐに分かった。
フォン・ド・ヴォーとスパイスが重なる香りが印象的だった

スプーンを入れる前に立ち上る香りを確かめる。最初に感じたのは穏やかなスパイス。その奥からフォン・ド・ヴォーの深い香りが続き、さらに野菜の甘い香りも重なる。刺激的というより、何層にも香りが積み重なっていく感覚だった。
フレンチカレーという名前に納得したのはこの瞬間だった。スパイスだけを楽しませるのではなく、ブイヨンや牛肉の旨味が一緒になって鼻へ届く。洋食とカレーが自然につながっている印象だった。
トロ肉はスプーンだけでほぐれる柔らかさだった

最も驚いたのはトロ肉の食感だった。ナイフはもちろん必要なく、スプーンを軽く当てるだけでほろりと崩れていく。この柔らかさは私にとって初めての体験だった。
肉だけでなく、野菜は適度に食感を残している。雑穀ご飯には粒感があり、ルーにはスパイスの殻が混ざっているような荒削りな質感も感じられた。それぞれ異なる食感が一皿の中で成立していて、最後まで単調にならない。
西荻窪で食べたフレンチカレーは食べ進めるほど表情が変わった

最初はフォン・ド・ヴォーの旨味が前へ出ていたが、食べ進めるにつれてスパイスの存在感が少しずつ増していく。
途中で温玉を崩すと、一気に味がまろやかになる。さらにトロ肉を細かく崩してルーへ混ぜ込むと、牛肉の旨味が全体へ広がり、一体感が増した。野菜と一緒に食べれば甘味がアクセントになり、一皿の中で何度も印象が変わる。
甘さ、コク、スパイス、それぞれが順番に顔を出してくるため、最後まで飽きることはなかった。
自家製ラッシーは食後ではなく途中で飲みたくなる濃さだった

カレーの前に提供されたラッシーは、真夏には嬉しいほど冷えていた。
ストローで吸うと、想像以上の濃厚さに驚く。マクドナルドのシェイクよりもしっかり吸う必要があるほど粘度があり、途中でグラスに添えられたスプーンですくってみると、そのとろみがよく分かった。
酸味は穏やかで、甘さも控えめ。カレーの余韻を消すのではなく、心地よく整えてくれる存在だった。自家製らしい個性を感じる一杯だった。
フレンチという言葉への先入観はいい意味で裏切られた

私は「フレンチカレー」と聞いて、濃厚な欧風カレーを想像していた。しかし実際には、小麦粉で作るルーに頼った重さは感じない。
素材を生かすというフレンチの考え方がカレーへ自然に落とし込まれ、フォン・ド・ヴォーの旨味や野菜、牛肉、スパイスがそれぞれ役割を持っていた。
「フレンチカレー」という言葉だけでは想像しきれない料理だったからこそ、この体験は実際に食べて初めて理解できた。
店主の一言と現金払いだけは覚えておきたい
料理を提供する際、店主が一皿について丁寧に説明してくれたことも印象に残っている。料理だけでなく、お客さんに伝えようという姿勢が自然に感じられた。
一方で、お会計は現金のみだった。当日の支払いは2,440円(税込)。カードや電子マネーを使うつもりだった人は、事前に現金を準備しておいたほうが安心だと思う。
私が滞在した時間は約40分。開店前から並んだものの、提供時間も含めて落ち着いて食事を楽しめる流れだった。
白ワインと合わせるためにもう一度来たいと思った

店内ではフレンチカレーを白ワインと合わせる食べ方が紹介されていた。
この日は午後に予定があったため断念したが、食べ終えたあとには「次回は白ワインと合わせたい」という気持ちが自然に残った。それは料理そのものに奥行きがあったからだと思う。
この体験が向いている人・向いていない人
向いている人
欧風カレーとは違う新しいカレーを体験したい人、トロトロに煮込まれた牛肉が好きな人、スパイスだけではなくフォン・ド・ヴォーの旨味も楽しみたい人、料理の香りや食感の変化まで味わいたい人には満足度の高い一皿だと感じた。
向いていない人
短時間で食事を済ませたい人や、キャッシュレス決済しか利用しない人には少し不便に感じるかもしれない。また、一般的な欧風カレーそのものを期待して訪れると、最初は私と同じように少し戸惑う可能性がある。ただ、その違いを受け入れられると、この一皿ならではの魅力が見えてくると思った。
実食動画
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【住所】〒167-0054 東京都杉並区松庵3丁目38−19 1a
【最寄り駅】:JR中央線・JR総武線「西荻窪駅」から徒歩2分。 住宅街寄りの飲み屋街の一角に店を構える。 Googleマップで場所を見る
このブログについて
このブログでは、チェーン店では味わえない、その街ならではの魅力が詰まったグルメ情報を中心に発信しています。首都圏を中心に、個人経営の飲食店や地域に根付いた名店など、Web上では見つけにくい飲食店を実際に訪問し、実食をもとに率直な感想をまとめています。
紹介している店舗はすべて筆者自身が足を運び、料理の味わいだけでなく、店の雰囲気や立地、訪問時の印象まで含めて記録しています。実体験に基づいた情報を大切にしているため、初めて訪れる方でも参考にしやすい内容を心がけています。
いつもの外食から一歩踏み出し、新しい味や店との出会いを楽しみたい方に向けて、非チェーンの飲食店を中心に紹介しています。本ブログが、日々の食事選びや外出のきっかけづくりに少しでも役立てば幸いです。
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