東京で美味しい玉子チャーハンを探すようになってから、インスタグラムや食べログを眺める時間が増えた。そんな中で何度も目に入ってきたのが、本駒込にある「兆徳」の玉子チャーハン。東京一という声も見かけるその一皿を、どうしても確かめたくなった。

日曜日の12時10分、本駒込の兆徳に到着した瞬間、目の前に広がっていたのは30人を超える行列だった。列は店の外に伸び、路地の空気に人の体温が混ざっている。立ち止まると、前に進むかどうか一瞬だけ迷いが生まれた。
それでも、この日は玉子チャーハンを食べるためにここまで来ている。引き返す理由はない。最後尾に並びながら、2時間後に食べるであろう一皿のことだけを考えていた。
本駒込「兆徳」で玉子チャーハンを求めて並んだ行列のリアル
列はゆっくりとしか動かない。足元のアスファルトからじわじわと冷えが伝わり、時間の経過とともに空腹が輪郭を持ちはじめる。スマートフォンを見る時間も次第に減り、意識は「兆徳の玉子チャーハン」に集中していく。
本駒込の人気店とは聞いていたが、この行列の長さは想像以上だった。途中で何度も「別の日にすればよかったかもしれない」という考えがよぎる。それでも列から離れなかったのは、ここまで積み上げた期待を無駄にしたくなかったからだ。

店内に入れたのは14時10分。並び始めてからちょうど2時間が経過していた。椅子に座った瞬間、足の裏に溜まっていた重さが一気に抜ける。ここまで来れば、あとは食べるだけだ。
最初に出てきた餃子で、兆徳の印象が揺れた
14時20分、先に運ばれてきたのは焼き餃子だった。皿がカウンターに触れたときの鈍い音と同時に、こんがりと焼かれた皮の色が視界に入る。きつね色の焼き目が均一に並び、油が薄く光を反射している。

箸で持ち上げると、底面のパリッとした感触が指先に伝わる。そのまま口に運ぶと、歯が皮を押し返すように抵抗し、そのあとすぐに中から熱い肉汁が流れ出てきた。舌の上に広がるのは、肉と野菜が混ざった甘みと香ばしさ。ニンニクの刺激はなく、代わりに素材の輪郭がはっきりと残る。
何もつけずにもう一口食べる。塩気は控えめだが、油と肉の旨みが舌の上に薄く膜を張るように残る。「あれ?」と、ほんのわずかな違和感が生まれた。今日の目的は玉子チャーハンだったはずなのに、意識が餃子に引っ張られている。
兆徳の玉子チャーハンを実食、その味と食感の正体
続いて運ばれてきたのが玉子チャーハン。皿が置かれた瞬間、湯気が顔の前に立ち上がり、頬に軽く触れる。視線を落とすと、黄金色に揃った米粒が均一に広がり、油が表面を薄くコーティングしているのが分かる。

レンゲを差し入れると、米粒がほぐれる感触が手元に伝わる。口に入れた瞬間、卵と油の香りが鼻に抜け、塩味が舌の中央に静かに乗る。パラパラとほどける食感と同時に、米粒の一つひとつが独立して動く。

ただ、最初の一口で感じたのは強いインパクトではなかった。味はシンプルで、塩の当たり方も穏やか。想定していた“ピーク”には届かない感覚が残る。それでも二口、三口と食べ進めると、レンゲを動かす手が止まらなくなる。油と卵のバランスが崩れず、一定のリズムで食べ続けられる。
その最中、ふと餃子のことが頭をよぎる。あの一口目の肉汁と皮の食感が、まだ舌の記憶として残っている。玉子チャーハンを食べているのに、基準になっているのは先ほどの餃子だった。
行列の先で、本当に記憶に残った一皿
14時35分、店を出たときに残っていたのは満腹感だけではなかった。玉子チャーハンは確かに完成度が高く、最後まで食べやすい一皿だった。ただ、「また食べたい」と思い返したときに浮かんだのは、焼き餃子の方だった。

もし次に本駒込の兆徳に来るなら、順番を変えるかもしれない。あるいは夜の時間帯に訪れて、餃子を軸にもう一度組み立て直す可能性もある。2時間の行列を考えると昼の再訪は迷うが、あの兆徳餃子の味だけはもう一度確かめたくなる。
支払いは現金で1,300円。玉子チャーハン900円と焼き餃子550円のセット価格としては納得感はある。ただし、この店で本当に食べるべき一皿を問われたとき、答えは一つに絞られる。
それは玉子チャーハンではなく、餃子だった。
向いている人
・本駒込の人気店「兆徳」を体験したい人
・玉子チャーハンを実際に食べてみたい人
・町中華や行列店に魅力を感じる人
向いていない人
・長時間の行列を避けたい人
・短時間で食事を済ませたい人
・強い味や分かりやすいインパクトを求める人
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【住所】〒113-0023 東京都文京区向丘1丁目10−5
【最寄り駅】:東京メトロ南北線「本駒込駅」から徒歩2分。 車通りの多い大きな道路に面した所に店を構える。 Googleマップで場所を見る
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